
先日ファシリテーションの研修を受けてきました。
「ふぁしりてーしょん・・?」
みたいな方もいらっしゃるかもしれません。
ファシリテーションは会議において用いられるもので,これまであまり意識せずに話し合いを進めてきた私にとってなかなか興味深いものでした。
コツを学ぶことで,比較的誰でも容易にできそうなことだったので、各企業の生産性を上げるためにも、参考までにここに記したいと思います。
ファシリテーションて何?
ファシリテーションのもともとの意味は
「~を容易にする」
「~を支援する」
「~を促進する」
です。
ここでつかわれるのが話し合いのファシリテーションということですね。
「え、司会と何が違うの?」
とか思ってしまいがちですが、司会・進行をするということではなく「支援・促進」することが重要です。
話し合いの内容そのものよりも,進め方・決め方・感じ方・関わり方といったような過程に重きをおいて、働きかけていくというような感じですかね。
で、それによってどのような効果をねらっているかというと・・
・受動的・消極的な会議から能動的・積極的な会議にチェンジ
・参加しているという当事者意識の向上
・様々な意見による新しいアイディアの発見
・個人・組織の活性化
などなど。
まぁ実際こんなにうまくはいかないのでしょうけど・・
自分も役にたててるぞ!感を出すことでモチベーションは上がりそうですよね。
ただし会議にもさまざまな種類があります。
このファシリテーションは皆で考えたり、アイディアを生み出す作業には効果を発揮しますが、淡々と進める会議にはあまり適していないようです。
その会議・話し合いの目的を理解し、その場に応じて使い分ける必要がありますね。
ファシリテーション基本技術4種
ファシリテーションの基本的な技術は以下の4つになります。
①会する:話し合いの場をつくる→共有
②議する:話し合いを活性化する→共感
③決する:話し合いを構造化する→共鳴
④動く:対立解消・合意形成する→共創
①の会するとは、話し合いの土台づくりです。
何を決めれば良いかが不明確だったり、ゴールが見えない会議は参加者も意見が出しにくく,的外れな意見を生んでしまう要因にもなります。
そこで、最初に
「この話し合いのゴール(終了時までにまとめるべきこと)」
「話し合いの進め方(どのように時間をつかっていくか)」
この2点を明確にし、それを全員で共有することが重要です。
そのためにもテーマを「~について」といったようなフワッとしたものだけでなく、ゴール(目的)についてもあわせて決めておくと効果的です。
例えば・・
次回のイベントの参加者を最低でも〇〇人は確保したいとした時に、テーマを
「次回のイベントについて」
だけではなく
「次回のイベントの参加者を〇〇人以上にする」
というようにゴールまで決めておくということになります。
あるいは
来年度の組織編成をゼロから決めていかなければならないとすれば
「次年度の組織編成について」
ではなく
「来年度の組織編成(〇〇から××まで)を決定・共有する」
というテーマが望ましいということです。
また、会議要項にも一工夫をこらして
・日時(終了時間)
・会場
・目的(ゴール)
・進め方(タイムテーブル)
・会議におけるルール
などを明記しておくと良いそうです。
こうすることで全員が要点を理解しやすく、その都度進度を確認できます。
②の議するとは、話し合いを活性化させるためのきっかけづくりをするということです。
活発な意見交換のためには,技術だけでなく空間づくりも意識することが大切です。
ポイントとしては
「席の配置」と「グループ人数」です。
よくない例として・・・
・お互いの距離が遠い
・顔が見えない
・人数が多い
などがありますが、これらの要素は当事者意識の低下や、特定の方の影響力が強くなったりするという問題があります。
そこで、その場にいる全員がそれぞれの思いを言葉にできるよう席の配置や話し合う人数の工夫をし、リラックスした空間を意識していきます。
あくまで自分たちにとってほど良い形を意識することが必要で、話し合いの途中で変えることも有効です。
(もしデスク移動が困難な環境にある場合は、イスだけでも移動できるとGOOD)
③の決するとは、書きながら話し合うことで「見える」ようにし、話を組み立てていくことを指します。
口から出た言葉はすぐに忘れてしまうため、要点をズラさないようにするためには
「可視化し、保持する」必要があります。
出た意見を受け止め、整理することで結論を導きやすくする効果があります。
ホワイトボード等を活用し、書きながら話し合いをすると良いでしょう。
なお、ここでの書くという表現はメモではありません。メモでは各自の記録になってしまいますので、参加者にしっかりと見えるようにリアルタイムでどんどん書いていくということです。
(メモについて独自の見解はコチラ)
また、「既に決まったことを書くのではなく、何かを決めるために書く」ということが大事なので、多少ゴチャついていても特に問題はありません・
なお、書き手はファシリテーターもしくは担当を決めてやってもらうと良いかと思います。
④の動くとは「経過の確認」と「橋渡し」です。
あくまでファシリテーターの役割は
・話を決まりやすくする
・実行につなげやすくする
ことです。
結論はファシリテーターが決定するものではなく、話し合いの参加者が自ら合意するものですので、参加者には常に話し合いを進めやすい環境でいてもらうのが理想的です。
ある程度議論が進んできた段階で「これまでにどのように進んできたか」を振り返ることで、納得感のある結論に到達しやすくなることが多いです。
つまり現段階での「結果」と「経過」を振り返るということ。
具体的には、これまで参加者に見えるように書いてきたものをつかって
「これまでにどのような意見が出ているか確認してみましょう」
「ここまで決定してきたことを確認してみましょう」
などと呼びかけていくとよいでしょう。
なお、時間内に結論がまとまらず、予定終了時間をオーバーしてしまいそうな場合は早めに対応する必要があります。
なぜなら、予定時間が過ぎることは参加者にとってストレスであり、モチベーションを大きく下げます。
引き続き延長して今決めてしまうのか。もしくは後日あらためて開催するのか。
ファシリテーターが状況をよく見極め,できるだけ早めに参加者にハッキリと伝えましょう。
最終的に会議が終了した際には、決定事項を確認し、実際の行動につなげることが重要です。
せっかくの話し合いも行動に移さなければ時間の無駄といっても過言ではないでしょう。
というわけで、ここまでがファシリテーションの基本技術になります。
文章におこしてみるとなかなかのボリュームですね。
この中のすべてを完璧にこなそうと思わず、まずは自分のできるところからやっていくこと。
ファシリテーションを「意識」することが大切なのかなと私は思っています。
私が感じた疑問点
この研修の中で私が疑問に感じたことがいくつかあり、質問してみました。
Q 話し合いの際、皆で順番に発言することは効果的か?
A 順番に発言すると既に発言した方の影響をうけやすく「~と同じで」などというようになり,意見が掛け算にならない可能性もある。つまり意見の質が下がってしまう。
Q 発言する人を指名してもOK?
A 指名してもいいが、先に発言した方の影響が大きく残るので注意を要する。
Q 雰囲気づくりって具体的にはどのようにすればよいか?
A 自己紹介+α(パーソナルにかかわること)でアイスブレイクする。何回やっても効果的。※アイスブレイク=緊張を解くみたいな表現
Q 影響力のある人以外から意見を聞きたい。
A あらかじめ話し合いのルールを設定したり,小グループ化させる。事前の根回しもアリ。
Q 終了間際に盛り上がってしまった時は?
A はじめに話し合いのルールを設けた上で、周知徹底する。例えば時間内に終わらせると周知させていればそこで終了。
Q 様々な考えをうまくまとめていくには?
A AとBの意見があったとすれば、その2つは「対」ではないことを理解する。
A←→Bではなく,Aは↑でBは→のベクトルであるイメージ。
もしくはAの円とBの円で交わるところを発展させるイメージなど。
経験と技術を磨いていくしかない。
すべての所属で効果的な会議を
皆さんの所属では効果的な会議ができているでしょうか?
厳しいことをいってしまうと,会議において意見をしない人は出席していないことと同じです。
それはつまりそこに出席している意味・価値がないということになります。
ダメな会議のパターンをファシリーテーターの基本技術にあてはめていうと、
「会」して「議」せず,「議」して「決」せず,「決」して「動」かず
ということになります。
意見のない報告の場であるとすれば,事前に用意された資料を読んでおけば良いだけです。
参加者にはその意識を変えていただく必要があります。
さらにその上で,話しやすい雰囲気づくりと活発な意見交換が重要になってきます。
ファシリテーションの技術を活かして、企業や各種団体の生産性をどんどん高めていきましょう。
※今回の研修講師のご紹介
徳田 太郎 氏
NPO法人日本ファシリーテーション協会に所属
著書「対話と熟議を育む」『はじめての地域づくり実践講座』
大学の非常勤講師などを務めており、年間200日以上のセミナーやワークショップをこなしている。